「イマイチだな。」
「瑠唯クン、厳しー!!」
10人くらい、ウタを聴いたが、心に響いてきた人はいない。
「まあ、素人だし、こんなもんだよ。」
ハア・・・小さく溜息を吐いた。
「じゃあ、呼ぶよ?」
ああ、と言うと「11番の方~」と裏声で呼んだ。はっきり言って、キモィ。
「失礼します・・・」
扉の向こうから暗い声がした。
「えーっと、お名前と学校は?」
女の子は静かに答えた。
「・・・春坂高校一年の・・・桜乃桜です・・・」
女の子・・・桜さんは声こそ暗いが、見かけはとても可愛い。
長い黒い髪。そして、モデルのようなほっそりとした体。まるでモデルのようだ。
「じゃあ、ウタって下さい。」
音楽がなり響く。
「あの・・・終わりました」
「あっ!ハイ。ドウゾ」
今度は逆の意味で声が裏返った。薫じゃない。俺だ。
「・・・決まりだな」
「ああ。」