リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-

「だが、よい名だろう?」

「だから、困るんじゃないですか…。」

複雑そうな顔をしながら笑う望美に、リズヴァーンが楽しそうな瞳を向けた。

「九郎に、また名を考えてもらうように頼んだ。」

「あっ、本当ですか?」

「あぁ。手紙をしたためたが、梶原邸であったときに了承した旨を聞いた。」

「良かった。セヴィのとき、男の子でつけること出来なかったでしょう?今回は断られるかと思ってました。」

「また、自分でよいのかと、問われた。」

その言葉を聞いて、望美がクスクスと笑い出した。

「九郎さんだから、お願いしてるのに…。」

「ならば、今回はどちらが生まれても、九郎につけてもらえばよかろう?」

「え~。駄目ですよ。男の子だったらリッパに先生の跡継ぎですもん。そうなったら、やっぱりビスクールに…。」

そこまで言って、望美は複雑そうな顔をする。

そんな望美に、リズヴァーンが苦笑した。

「私は気にせぬが?」

「私は気にします。ちゃんとセヴィみたいに、鬼としての矜持は持ってもらいたいもの。」

「その能力が無くても、か?」

「そうですよ。この子が私似の子でも、男の子だったら鬼として育てます。」

自分の腹に視線を落としながら、望美はきっぱりと言い切る。

リズヴァーンはそんな望美を見ながら、優しく笑んだ。

「どちらにせよ、無事に生まれることを願おう。」

「どっちにしても、可愛い子ですよ。間違いなく。」

望美はニコッと笑って、リズヴァーンの青い瞳を見つめる。

リズヴァーンは優しく笑い、望美へと顔を寄せた。

「やはり、お前似の子がよい。きっと、愛らしかろう。」

息がかかるその距離で、リズヴァーンが愛おしそうに、望美に囁く。

望美はクスクス笑いながら、まるで秘密ごとを話すように、囁きかけた。

「セヴィも、先生に似て、可愛いですよ。」

「私に似て、可愛いのか?」

望美は楽しそうに笑いながら、リズヴァーンにゆっくりと口付ける。

リズヴァーンはなすままに、しあわせをその身に受けた。






望美を抱きリズヴァーンが部屋へ戻るころ。

二人を見守っていた月が雲間に隠れ、遠くで、ふくろうの声が微かに聞えた。