リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-

「――…すまない。」

「そんな笑いながら言われて、説得力があるとでも、思っているんですか!?」

布団の中で怒ったように声をあげる望美に、私は再び、「すまない」と謝る。

だが、笑いながらだったので、余計に怒りに油を注いだらしい。

ついには、枕まで飛んできた。

それを軽く手で、受け止めながらも、私の笑いが収まることがない。

「もう!先生なんて、知りません!」

怒り声を上げる望美は、とうとうへそを曲げてしまったらしい。

それでも、どこかが壊れてしまったのではないかと思うほど、笑いが込み上げてくる。

――…愛らしくて、たまらない。

どれだけ、わがままを言われても、どれだけ、噛み付くようなことを言われても、すべてが愛らしさに変わってしまう。

口付けを拒もうとしない、その想いがうれしくてたまらないというのに、それ以上望んでも、拒まないといわれる。

今すぐにでも、襲ってしまいそうな獣を内に宿しているのに、我慢をするなと言い出す。

獣のように凶暴な欲望も、愛おしさで溢れるこの心も、そのすべてを、抑えなくてもいいのだと、言われている気がする。

それは、愛情を、きちんと愛情として受け取ってもらえているのだと、感じることが出来て、また、愛おしさが溢れ出る。

――…その、真っ直ぐな心が、愛おしくてたまらない。

獣のような欲望まで、その心の前では、牙が抜かれてしまいそうだ。

本当に、愚かしいほど望美が愛おしくて――…愛おしくて、たまらない。

愛おしさで満たされた暖かな気持ちを、一度、胸に埋めると、私はゆっくりと笑いを納め、息をつく。

そして、投げつけられた枕をそっと、望美の横に置く。

起きているのは、その気配でわかる。

だから、ゆっくりとその体に添うように、私は望美の横へと体を倒すと、肩肘をつき、布団を被る望美の傍で、静かに口を開いた。

「望美。お前の言葉を笑ったわけではないのだ。」

愛おしさを込めて囁くように、言葉を紡ぐ。

「……じゃあ、何で、笑ったんですか?」

むくれたような声が聞えて、私の顔が自然と綻んだ。

「私が、どれほど愚かな男なのかを、笑っていたのだ。」

笑っていた理由を一言で言えば、望美はパッと布団を下げ、驚いたように顔を向けてくる。

そんな望美に、私は笑みを深めた。

「……だが、お前の前で愚か者になるのは、悪くはないようだ。」

「先生は、愚か者なんかじゃ、ないです。」

「そう、見えるか?」

優しく言えば、望美ははっきりと肯く。

そして、真っ直ぐに私を見つめて、当然のように言った。