「――…すまない。」
「そんな笑いながら言われて、説得力があるとでも、思っているんですか!?」
布団の中で怒ったように声をあげる望美に、私は再び、「すまない」と謝る。
だが、笑いながらだったので、余計に怒りに油を注いだらしい。
ついには、枕まで飛んできた。
それを軽く手で、受け止めながらも、私の笑いが収まることがない。
「もう!先生なんて、知りません!」
怒り声を上げる望美は、とうとうへそを曲げてしまったらしい。
それでも、どこかが壊れてしまったのではないかと思うほど、笑いが込み上げてくる。
――…愛らしくて、たまらない。
どれだけ、わがままを言われても、どれだけ、噛み付くようなことを言われても、すべてが愛らしさに変わってしまう。
口付けを拒もうとしない、その想いがうれしくてたまらないというのに、それ以上望んでも、拒まないといわれる。
今すぐにでも、襲ってしまいそうな獣を内に宿しているのに、我慢をするなと言い出す。
獣のように凶暴な欲望も、愛おしさで溢れるこの心も、そのすべてを、抑えなくてもいいのだと、言われている気がする。
それは、愛情を、きちんと愛情として受け取ってもらえているのだと、感じることが出来て、また、愛おしさが溢れ出る。
――…その、真っ直ぐな心が、愛おしくてたまらない。
獣のような欲望まで、その心の前では、牙が抜かれてしまいそうだ。
本当に、愚かしいほど望美が愛おしくて――…愛おしくて、たまらない。
愛おしさで満たされた暖かな気持ちを、一度、胸に埋めると、私はゆっくりと笑いを納め、息をつく。
そして、投げつけられた枕をそっと、望美の横に置く。
起きているのは、その気配でわかる。
だから、ゆっくりとその体に添うように、私は望美の横へと体を倒すと、肩肘をつき、布団を被る望美の傍で、静かに口を開いた。
「望美。お前の言葉を笑ったわけではないのだ。」
愛おしさを込めて囁くように、言葉を紡ぐ。
「……じゃあ、何で、笑ったんですか?」
むくれたような声が聞えて、私の顔が自然と綻んだ。
「私が、どれほど愚かな男なのかを、笑っていたのだ。」
笑っていた理由を一言で言えば、望美はパッと布団を下げ、驚いたように顔を向けてくる。
そんな望美に、私は笑みを深めた。
「……だが、お前の前で愚か者になるのは、悪くはないようだ。」
「先生は、愚か者なんかじゃ、ないです。」
「そう、見えるか?」
優しく言えば、望美ははっきりと肯く。
そして、真っ直ぐに私を見つめて、当然のように言った。
「そんな笑いながら言われて、説得力があるとでも、思っているんですか!?」
布団の中で怒ったように声をあげる望美に、私は再び、「すまない」と謝る。
だが、笑いながらだったので、余計に怒りに油を注いだらしい。
ついには、枕まで飛んできた。
それを軽く手で、受け止めながらも、私の笑いが収まることがない。
「もう!先生なんて、知りません!」
怒り声を上げる望美は、とうとうへそを曲げてしまったらしい。
それでも、どこかが壊れてしまったのではないかと思うほど、笑いが込み上げてくる。
――…愛らしくて、たまらない。
どれだけ、わがままを言われても、どれだけ、噛み付くようなことを言われても、すべてが愛らしさに変わってしまう。
口付けを拒もうとしない、その想いがうれしくてたまらないというのに、それ以上望んでも、拒まないといわれる。
今すぐにでも、襲ってしまいそうな獣を内に宿しているのに、我慢をするなと言い出す。
獣のように凶暴な欲望も、愛おしさで溢れるこの心も、そのすべてを、抑えなくてもいいのだと、言われている気がする。
それは、愛情を、きちんと愛情として受け取ってもらえているのだと、感じることが出来て、また、愛おしさが溢れ出る。
――…その、真っ直ぐな心が、愛おしくてたまらない。
獣のような欲望まで、その心の前では、牙が抜かれてしまいそうだ。
本当に、愚かしいほど望美が愛おしくて――…愛おしくて、たまらない。
愛おしさで満たされた暖かな気持ちを、一度、胸に埋めると、私はゆっくりと笑いを納め、息をつく。
そして、投げつけられた枕をそっと、望美の横に置く。
起きているのは、その気配でわかる。
だから、ゆっくりとその体に添うように、私は望美の横へと体を倒すと、肩肘をつき、布団を被る望美の傍で、静かに口を開いた。
「望美。お前の言葉を笑ったわけではないのだ。」
愛おしさを込めて囁くように、言葉を紡ぐ。
「……じゃあ、何で、笑ったんですか?」
むくれたような声が聞えて、私の顔が自然と綻んだ。
「私が、どれほど愚かな男なのかを、笑っていたのだ。」
笑っていた理由を一言で言えば、望美はパッと布団を下げ、驚いたように顔を向けてくる。
そんな望美に、私は笑みを深めた。
「……だが、お前の前で愚か者になるのは、悪くはないようだ。」
「先生は、愚か者なんかじゃ、ないです。」
「そう、見えるか?」
優しく言えば、望美ははっきりと肯く。
そして、真っ直ぐに私を見つめて、当然のように言った。

