リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-

「……そう、か。」

「そうです。だから、ちゃんと服を着てください。でないと、私の心臓が壊れちゃいます。」

そっぽを向きながら話す望美の背中に、私はゆっくりと体を傾け、唇を寄せる。

望美が壊れてしまいそうだと言う、心臓のあたり。

そこは、滑らかな肌が広がっている。

生きている音が生まれる場所が砕けることのないように、私はそっと、口付けを落とした。

唇が触れた瞬間、ピクッと望美の肩が揺れる。

「せ、先生……?」

ゆっくりと、恐る恐ると言う風に振り返る望美は、怪訝そうに私を見つめる。

「な、何を、するんですか?」

「――…お前は、私が何をすると思う?」

意地悪く尋ね返すと、望美はムッとしたように口を尖らせた。

「……きっと、喉が渇いただけですよね?」

明らかに違うとわかっているのだろう答えを返す望美に、私は小さく笑って、その答えにのる。

「そうだ。よくわかったな。」

「~~~!嘘つきッ!」

望美がトンと、胸に押し当てるようにペットボトルをよこす。

受け取りつつも、愛らしい言い草に、つい、笑みが浮かんだ。

「そう、人を疑うのではない。」

「それは、正直者が言うことです。」

「ほう。ならば、正直に言っても、お前は困らぬというのだな?」

ゆっくりと顔を近づけながら言えば、何をされるのかがわかったのか、「あ。」と一言零し、面白いように望美の目が泳ぐ。

それでも、拒まれないことをいいことに、私は望美の唇に口付けを落とした。

「……ふっ……ん……。」

舌を絡めるようにゆっくりと、口内を味わう。

すると、望美も口付けに答えようとして、私の舌を追ってくる。

その拙いながらも愛らしい行いに、己が熱を持ち始めたのがわかった。

「……困るのは、望美だろう?」

唇を離し、小さく笑いながら言えば、仄かに上気する肌をそのままに、望美が恥ずかしそうに顔を俯かせる。

そして、私の肩にコツンと、額を寄せた。

「困る……けど、嫌じゃない、から。」

ポツリと、花色の髪から色香漂う桜色のうなじを覗かせながら話す望美に、苦笑が零れてしまう。

「いや、すまない。困るのは望美ではなく、私のようだ。」

「え?」

ゆっくりと顔をあげる望美の背に、私は静かに片腕を回し、優しく抱きしめた。

きょとんと、少女の瞳が、私に向けられる。

同時に、触れる素肌がどこか熱く、すぐさま、己が沸き立つのを感じた。

――…どうして、そう、私を煽るような仕草をするのか。

いや、私が勝手に煽られているだけのことなのだろうが、どうしても、望美の挙動に、背が甘く粟立つ。