しかも、誰にも知られたくない真実を、容赦なくペラペラと。

あの、八葉の面々に、なにげな~く、他愛のない話に混ぜながら……。

(みんなの驚く顔を見ながら、ものすごく、楽しそうに笑っているんだろうなぁ……)

そう思うと。

…………。

………………。

(――…ホント、あの軍師も、どうしてくれよう)

いや~な予感しかしない中。

起こっちゃったからは仕方がないとも、まだ思えずに。

「………ま。とにかく、お家に帰りましょうか……」

ぐったり感いっぱいで、望美はリズヴァーンに、声をかける。

「いや、梶原邸に行かねばなるまい」

すっと、音もなく立ち上がるリズヴァーンを見ながら、望美は、もう一度、大きくため息をついた。

「――…先生がそう言うなら、行きますケド……」

隠行で跳べるかどうかを聞くだけのために、わざわざ、梶原邸まで行ってもいいですけど。

この際、先生が言うのなら、どこへでもいきますケド。

ホント、今更、それは、どうでもいいんですけど。

(でも、先生。――…他に、私に言うことがあるんじゃないですか?)

「問題があるのか?」

振り向きざまに聞かれて、物言いたげに望美はゆっくりと口を開く。

が。

「………………」

「望美……?」

「…………ううん。何もないです」

小さく返事をした望美は、軽く首を振って、そのまま、ちゃっかりハチミツのツボを持って、立ち上がった。

(私から言うのも、おかしな話な気もするしなぁ……)

なんともいえない思いを胸に、望美はリズヴァーンと共に、弁慶の家を立ち去っていく。

二人で、弁慶の家の扉を出ると。

「……具合は、どうだ?」

今更ながら、今更のように、リズヴァーンの気遣うような声が聞こえて。

望美はつい、苦笑を零した。

(ソレって、薬師の家から帰るときに尋ねられる質問じゃないよね?)

でも、それすら、リズヴァーンらしくて。

ゆっくりと、愛しい人を振り仰ぎ、目元を愛おしそうに綻ばせながら、その蒼い瞳を見つめる。

「もう、話が衝撃的過ぎて、全部、吹っ飛んじゃいましたよ」

「……そうか」

「でも、あの薬湯を飲まずに済んだだけ、マシかもしれないですけど、ね」

おどけたように笑う望美を見て、リズヴァーンの顔にも、ようやく、仄かな笑みが浮かぶ。

――…苦笑だったけど。


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穏やかな日差しの中、人気の少ない川原を、散歩とばかりに、二人でのんびりと歩いていた。