今、思い返してみれば。

今更なんだけど、確かにあの日は、おかしな日だった。

そのときは、わけもわからず、ただ、みんなで大騒ぎしたのを覚えている。

それはもう、奇妙だったけど、でも、ものすごくしあわせで、楽しい日だった。

でも、まさか、そのことに、こんな意味があるなるなんて思わないでしょう?

ましてや、そんなコトを仲間から知らされるなんて――…ッ!

――…これは、何かのいじめ?それとも、羞恥プレイなの?

きちんと神様に戻った白龍を、今すぐにでもココに呼び出して。

がっちりとその胸倉掴んで、締め上げて。

「私に何の恨みがあるのかなぁ~~~?」って。

そう、真剣に聞きたくなったのは――…。

(きっと、私だけ、なんだろう、なぁ……)

顔ばかりか、耳までも真っ赤に染めあげながらも、ちらりと隣を窺えば。

口元を押さえ、固まったまま動かない「鬼」が目に映る。

まるで、初めて触れてきてくれたときのような、やっちまった感のある先生の姿を見て。

普段、動揺なんて微塵も見せない人が、あからさまにうなだれている姿を見て。

(ホント、どうしてくれよう――…)

心の底から、しみじみと、深~~~い、ため息が出そうになった。




≪こうして私は途方に暮れた≫~前編~




最近、調子の悪い日が続いていた。

別段、ドコが痛いとかはないのだけど、妙に、体の調子が悪い。

ご飯も、半分食べたら胸焼けを起こすし、毎日振っている剣も、いささか鈍りがちだった。

加えて、真っ昼間に、とてつもなく眠くなる。

――…まぁ、これは、誰かさんのせいだとも、言えるんだけど。

それでも、調子が悪いぐらいでは、日々の家事を休むわけにはいかないので、頑張っては、みた。

掃除とか、掃除とか、掃除、とか。

……時々、洗濯物も畳むケド。

でも。

まかりなりにも一緒に暮らしているのは、長年、自分が師事している人だ。

ムリをしていることなんて、簡単に、見破られる。

それはもう、景時さんと九郎さんの鬼ごっこ並みに、簡単に見つけられる。

と、同時に、ものすごく心配性だし、めちゃくちゃ過保護な人なのだ。

――…人が恐れる、鞍馬の「鬼」とういうのは。

だから、すぐさま、すべてを取り上げられて。

「お前は、何もせずに、横になっていなさい」と。

雑巾を高らかに掲げるダンナ様から、厳命が下る。

それって新妻として、どうよ?とも思ったケド。

逆らったら、逆らったで、ものすごく面倒なので。

言われるまま、昼間は何もせずに、ただ、縁側で眠る日が訪れた。

――…のわりに、夜に寝かせてもらえないのは、どうかと、文句の一つも言いたくなるのだけど。

でも、まぁ、折角だからと。

寝かせてもらえない夜の分を取り返すように、惰眠を貪る日々が、望美に訪れた。