すっきりしたように潔く言うビスクールに、望美の眉が少しだけ釣りあがる。

「……その言い方も、何気にムカつく。」

「口の減らない女だ。」

「ビスクールも、ホント失礼な男だよね。」

望美の言葉に、ビスクールがムッと眉を寄せた。

「…俺のことが言えるのか?」

「言えるわよ。いくら首領でも、先生の友達のくせに、偉そうだもん。」

「偉そうではない。俺は、おまえより偉いんだ。」

きっぱり言われて、望美は怒ったように頬を膨らませる。

その姿を見て、リズヴァーンが苦笑を深めた。

「ビスクール。望美は『白龍の神子』。立場は変わらないと思うが?」

「そんな事はない。所詮は『人』のことだろう?」

「だが、望美が神子であったことも、また、事実。」

リズヴァーンの言葉に、ビスクールが微かに眉を顰めた。

「…そうだな。リズヴァーンに免じて、この女が『白龍の神子』だとは、認めてやろう。」

ビスクールが言えば、望美が怪訝そうな顔で、その顔を窺った。

「…何で、いきなり…?」

望美の呟きに、『鬼の首領』であるビスクールは、ニヤッと笑った。

「俺はここまでムカつく女に、会ったことがない。」

それを聞いて、『白龍の神子』であった望美は、やっぱりムッとして。

『地の玄武』であったリズヴァーンは苦笑して。

暖かな太陽が傾く中。

鞍馬の庵には、怒ったような愛らしい声と、それに応酬する男の声が響き――…。

その日の夕暮れは、大層、賑やかなものになっていた。



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