ただ、望美の笑みに、救われた気がした。

――…大切にしたいと願っているものに、大切にされていると感じてもらえていると言う幸福。

望美に愛されているだけではなく、きちんと、私の想いを受け取ってもらえている。

そう、思えた。

「――…では、より一層、お前を慈しむことにしよう。」

優しく笑み、私は望美を優しく抱きしめる。

ただ、ただ、大切に、そっと、包み込むように、その小さき体を腕の中に閉じ込めた。

望美は、何がそれほどにうれしいのか、ニコニコと笑って、素直に胸に擦り寄ってくる。

「じゃあ、私はここで先生に大切に守られていようかな。」

「ああ。そうしなさい。」

どこか楽しそうに言う望美に、私はポンポンと優しくその背を叩いて、笑みを浮かべた。

想いを寄せ合うものが、互いを慈しむ。

それは、多くのものに愛され、慈しまれる望美には、考える必要もないことなのだろう。

望美にしてみれば、簡単なことなのかもしれない。

『愛し合う』こと。

望美は難なく、それをしてみせる。

人の心を大切に思うことが当たり前の望美に取ってみれば、私の機微など、些細なことなのだろう。

だが、ただ乞うだけの私にとって、返される想いが、どれほど尊く見えているのかは、きっとわかるまい。

無条件とも言えるほど、その笑みだけで、私の想いを受け入れる望美には、気づくことはないのやも知れない。

それでも、返される喜びを知っているからこそ、その喜びを、愛しさを、望美にも伝えたい。

この幸福を、愛しきものへ――…。

想い、想われ、愛し合う。

その幸福は留まるところを知らない。

――…愛し合うことは、運命の螺旋にも似ているのかもしれない。

望美の寝息を聞きながら、眠りに落ちる寸前、ふと、そんな事を思った。



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