リズ×神子2-お前がそう望むのであれば-

「先生は、ただ、自分の心に素直になったんでしょう?」

望美がそのように私を見ていたと知ると、驚きで、一瞬、声が詰る。

その一言は、私にとって衝撃的だった。

だが、望美はそんな私を不思議そうな顔で見つめながら、言葉を重ねた。

「今まで、ずっと、先生は自分を抑えて、皆を見守ってきたから、やっと私の前で自分らしくなれただけ。違いますか?」

小首を傾げながら、聞いてくるその言葉に、私は困惑気味に口を開いた。

「……そう、なのだろうか?」

「え…っと、私に聞かれても……。先生は、どう思いますか?」

「自制が効き辛くはなったと思うが……自分らしくなど、考えたことがない。」

はっきりと言えば、ほんの少しだけ、望美の顔が悲しげに揺れる。

「でも、私は目の前にいる先生が、本当の先生だと思います。」

だが、やけにきっぱりと望美は言葉を紡いだ。

望美がゆっくりと、手を伸ばし、私のやけどのあとに触れる。

「我慢をしない先生が、本当の先生なんです。言ったでしょう?余裕のない先生は、ものすごく自分に正直なんですよ?」

いとおしむように優しく望美が囁くが、自分が今まで行ったことを思い出して、私は小さく笑った。

「……そうかも、知れぬ。」

「はい。あんなに綺麗な目をするんだもの。先生は愚かな人じゃないですよ。」

ニコッと笑う望美を、私は優しく抱きしめる。

望美はその腕を振り払うことなく、うれしそうに私の胸へと頬を寄せてきた。

「――…目が覚めたとき、そのままの先生がいてくれると、すごく安心するんです。」

「そのまま……とは?」

「すっごく、しあわせそうに私を見てくれるでしょう?……それがうれしいんです。」

「――…私はそんな顔をしているのか?」

「はい。満足そうな顔をしていますよ。私のほうが、いいなぁって思っちゃうぐらいに。」

クスクスと笑う望美が、あまりに楽しそうなので、私の顔にも、自然と笑みが浮かんだ。

「ならば、お前は満足していないということか?」

「え?」

「人を見て、うらやましがるぐらいならば、望美は違うと言うことなのだろう?」

揚げ足を取るように笑いながら言えば、望美は思い切り首を横に振る。

「そんなコトは――…っ!」

言いながら、後に続く言葉が頭に浮かんだのか、望美が頬を赤く染め上げた。

その様子に、私は苦笑を零す。

「……言いたいことは、最後まで言わねば、人に誤解を与えかねぬが?」

「~~~!私がどうなのかは、先生が一番わかっているでしょう?」

「私はお前ではない。言ってもらわねばわからぬこともある。」