「煩いよ。龍市」
一月が龍市と呼んだ生徒は名前と容姿から男と判断出来たため、安堵のため息をつく。
「そうだぞ。少し黙っていろ、榑林龍市」
「なんでフルネームなんだよ。先生・・・」
彼の名前は榑林龍市(くればやしりゅういち)と言うらしい。
彼は金髪に青いメッシュを所々に入れ、瞳が緑色になっている。
「HRが終わったらにしろよ。ってことで、終わり」
普通、転校生がいたら、
転校生の机の周りにクラスの人達が集まるもんじゃないんですか?
紗耶香は思わずそう思ってしまった。
今、HRが終わり、休み時間。
紗耶香はきちんと机に座っている。
だが、
紗耶香の机の周りには誰もいない。
クラスのほとんどの生徒は櫻吹一月の周りに集まっていた。
「それでね、一月~」
「ねぇねぇ!私の話も聞いてよ!」
「順番に話してくれよ・・・」
一月は女子の対応に困っているようだった。
苦笑いしながら、一人一人の話を聞いている。
「モテるのね。あの人・・・」
「うん。モテてる。」
「きゃっ!」
独り言のつもりがいつの間にか隣にいた榑林龍市に聞かれ、答えを返された。
ありがたいが、気恥ずかしい・・・。
隣の席に腰を下ろしている龍市はニコッと微笑する。
「一月のとこ、おいでよ」
一月といると楽しいよ、と言って一月を見る。
紗耶香もそれにつられて一月に目を向ける。