「阿達紗耶香です」

阿達紗耶香(あだちさやか)。

今日からイースター学園の生徒となった高校二年生だ。

紗耶香は無表情のままお辞儀をする。
顔を上げた紗耶香は一際目立つ生徒を見た。

窓際の一番後ろ。
日本人らしい肩までの黒髪、
右の瞳は紫色をしているが、左の瞳は前髪で見えない。
彼なのか、彼女なのかは見ただけでは判断できない程に綺麗な容姿をしている。

「じゃぁ、阿達の席は櫻吹の隣だ」
「櫻吹?」

紗耶香が首を傾げて、教室内を見回した。

「あぁ。目立つ奴がいるだろう?綺麗すぎてな」

このクラスの担任がため息をついて、

「櫻吹!」

その人の名前を呼ぶ。

すると、

「はい?」

一際目立つ、綺麗な生徒が首を傾げて担任を見た。
それから、ズボンのポケットに手を突っ込みながら、立ち上がる。

この学園は式典などの行事以外では各自の戦闘スタイルに合わせた服装をする決まりになっている。
そのため、櫻吹が立ち上がっても、男なのか、女なのかは判断が難しい。

「俺の隣ですか?」

問題解決。
男でした。
と、紗耶香は心の中で小さくガッツポーズをした。

「櫻吹一月です」

櫻吹一月(さくらぶきいつき)。
紗耶香のことを数秒間見つめてから、微笑を浮かべた。

「一月の隣が転校生?」

次に声は一月の席の前から聞こえて来た。