「アンタ達ねぇ・・・」
紗耶香はため息をついて一月を見上げた。
「迷惑とか、考えてる?」
そう言うと、一月は目を細めた。
だが、すぐにいつもの通りに微笑んだ。
「考えてないよ。どうせ、人間は自分勝手なんだから。そんなの関係ないでしょ?」
声がいつも違う。
『怖い』
龍市に抱いた恐怖とは違う。
体の芯から凍り付く、
声、
微笑み、
言葉。
「そうだろ?」
一月の口から紡がれる言葉が、
こ わ い 。
「阿達ぃ」
ハッと我に返ると、龍市が怪訝な顔をしながら紗耶香の顔を覗き込んでいた。
「何?やっぱ、一月に惚れた?」
「馬鹿じゃないの」
紗耶香が龍市を睨んだ。
「女の子なの?」
聞いたことのない声が聞こえて来た。
龍市の後ろを覗き込む。
龍市の後ろには小柄な男の子が立っていた。
「その子・・・」
「岬計広(みさきかずひろ)だよ。岬ちゃんって呼んであげて」
「岬の方が嬉しい」
「じゃ、岬で」
計広はコクリと頷く。
「でも、二人目か・・・」
二人目?
計広の言葉に紗耶香が首を傾げる。


