「着いたー!!」
目の前には、ガラスが詰められた大きな建物。
『桃香咲病院』
桃香咲病院は、この地域でも大きな病院で、特に老人が多く入院している。
「えーっと、斎藤さんの病室は・・・」
悩む聖くん。なんか可愛い。
「306号室です!三階ですね」
そして、エレベーターで三階へ。
今、このエレベーターに乗っているのは、私と聖くん。そして、おじいさんとおばあさん。
『ピンポーン』
ドアが開いた。病院の匂いが立ちこめる。私って、以外と匂いフェチかも・・・
「どうぞ」
聖くんは、おじいさんとおばあさんを先に行かせた。
「?神永さん?行こう?」
固まる私を不自然に思い、顔を近づけてきた。
「神永さーん」
あ・・・聖くん、まつ毛長い・・・しかも、良いにおい。
「神永さん!」
「えっ!」
「行こう?」
「あっ!はい。」
私って、変態じゃない・・・?
『コンコン』
「は~い」
ガラ・・・
「あっ!戸倉くん!来てくれたの!?嬉し~い!」
ベットから飛び降り、松葉杖で近づく。
「きゃっ・・・」
「おっと・・・大丈夫?」
「きゃ~ん!ありがとお!」
如何にもわざとらしく、躓いた。ように見えた。
「あっ・・・神永さんも一緒なんだあ・・・」
元々、「メガネはダサい」の法則を作ったのは、斎藤奈々だった。
「あ~なんだか喉乾いちゃった~・・・神永さん、紅茶買ってきてくれない?」
二百円玉を財布から出しながら、私にお願いをする。・・・というか、部屋出てすぐなんだから、自分で買えばいいのに・・・
「うん。分かった。戸倉くんは何がいい?」
「あっ・・・俺はいいや。俺が行こうか?」
「ううん。すぐそこだし。」
部屋を出ると、話声が聞こえた。
「・・・ねえ、戸倉くん。」
「何?斎藤さん」
ベットのきしむ音がした。
「私、あなたの事、好きなの」
「え・・・」
ドサッという誰かのベットに飛び込む音がする。
「私。あなたが好き」
斎藤奈々は、何を隠そう、男好きで有名だった。自分のものにしたら即別れる。なんて事がよくあると、真菜が言っていた。
「私と、あのメガネのブス。どっち選ぶ?」
メガネのブスって、私の事?
「俺は、神永さんの事、ブスなんか思ってないし、斎藤さんの事は友達としか思ってないから」
「ブスなんか思ってない」
その言葉が、心に深く残った。
「そう・・・」
ガラッ
「紅茶、買ってきました。」
「あっ!ありがと。」
「じゃあ、もう帰ろうか。」
その後、病院を出た後、私はある事にきづいた。
「首元が・・・赤くなってる・・・」
まさか、斎藤さんが?
まさか・・ね?
その一週間後。私は、あんな事が起きるなんて、思ってもみなかった。