「じゃあ、学級委員の神永さんと戸倉くんはクラス代表で斎藤さんのお見舞いね。」
職員室の中はコーヒーの匂いがして、ちょっと大人っぽい。
「はい。じゃあ、行こうか。神永さん!」
「はいっ!」
学級委員の戸倉聖くん。背も高いし、男らしいし、そして何より・・・
「きゃあ!!」
バサバサ・・・
1人の女子生徒が唖然とする。
「大丈夫?手伝うよ。神永さん、ちょっと待ってて?」
「あの、いいです。これくらい1人で・・・」
聖くんが拾った教科書を受け取ろうとする女子生徒。でも、
「いいよ。いっしょに持っていく。これ、どこまで?」
そして何より、超優しい・・・
「完璧・・・」
1人呟くメガネの生徒。髪は神永という性と同じで超ロングのツインテール。身長は145センチくらいで小柄。クラスで一番頭がいい。
「瞳~!こんなところでなにしてんの~?」
階段から下りてくるクラスメイトの真菜。
「ああ、戸倉くん待ってるの。」
真菜は、佐崎真菜っていって、クラスでも運動神経抜群のスポーツ選手。
「へえ~。というかさ、いい加減そのメガネやめたら?」
あきれ顔をする真菜。無理もない。クラスでメガネをかけているのは私1人。うちのクラスの2―Aでは、ひそかにメガネはダサいということになっている。そのため、皆コンタクトに変えた。私もそうしようとした。でも・・・
「だって、私のメガネの度強すぎてコンタクトじゃ見えないんだもん。」
そう、私はメガネなしだったら、ぼやけまくって何も見えない。
「そうはいってもさ~・・・」
すると、廊下から荒い息が聞こえてきた。
「ハァッ・・・ハアッ!・・・ごめ・・・遅れて・・・行こうか。」
余程走ったんだ。汗もかきまくって、シャツも濡れてる。
「じゃ、また明日ね~!瞳~」
手を振りながら一気に階段を駆け下りていってしまった。真菜は、極度の男嫌いらしい。
「じゃあ、行きましょうか?」
私が言うと、息を整えて笑顔を作った。
「う・・ん。行こうか。」
私ははっと思い、バッグからタオルを取り出した。
「どうぞ!使ってください!」
「ありがとう!でも、持ってるんだ」
バッグから黒のプーマが付いたハンカチを出した。
「あ・・・そうですか。」
なんだ。ちょっとがっかり。
「でも、せっかくだから、ハンカチ交換しない?」
「え・・・はい!」
交換する時少し触れた彼の手は、温かくて、大きくて、ドキっとした。
「じゃあ、行こうか!」
学校を出て、駅を目指す。その間もドキドキが止まらなかった。