「水野さん、おはよ!
 今朝のニュース見た?」

「本当、気味悪いよねぇ……
 こんな田舎で。」

「気味悪いってか、不思議だよね。」

「不思議って言えば、水野さんの目!
 どうして朱いの?」

「もしかしてハーフ?
 外国語とか話せるの?」

「親のどっちかが日本人とか?
 髪は黒いもんね!」

「朱乃って名前も、珍しい名前だよね。
 外国語が由来なの?」


クラスの女子達がいつの間にか、

私の机を囲んで話している。

私は溜息を吐いた。


逐一説明するのも面倒臭い。

こんな時、加奈が傍にいてくれたら……

私が席を離れようとした瞬間、

横から助け舟が出た。

幼馴染の爽だ。

 
「水野の目は生まれつきだぜ。」

爽は私の机に手を付くと、

囲んでいる女子達を睨みつけた。

「ついでに言えば水野は、
 正真正銘の日本人だ。」

「谷村には聞いてないじゃん。
 ただ水野さんと仲良くなりたく……」

「仲良くなりたいなら、
 人を質問攻めにするなよ。」


爽はそれだけ言うと席に着いた。

興醒めした女子達も離れていく。

私は肘をついて窓の外を見た。



雲はとても白く、

空は透き通る様に蒼い。



昼休みになると

屋上で爽と風に当たりながら、

加奈が来るのを待った。

「気にすんなよ、水野。
 あいつらも悪気はねぇはずだから。」

「うん、ありがと…」

「ちょっと谷村!
 あんた何やらかしたの?」

売店から戻った加奈が、

いきなり爽に咬みついた。


「待てよ!別に俺は何も……」

「下の階で噂になってたよ?
 あんたが朱乃に惚れてるとか。」

「はぁ?知らねぇよ。
 これだから女子は……」

「女子は、何よ!
 あんたが誤解を招く事するから…」


私は空を見上げた。

今日も、お天気だ。