二人で三丁目の街を歩き回った。
少しでも異変がないか、
周囲に目を走らせる。
信号を待ちながらコートを抑える、
電話を掛けながら家路を急ぐ、
誰かが来るのを待っている――
そんな人々の中を歩きながら、
注意深くパトロールをした。
ファーストフード店、
コンビニ、居酒屋――
それ程賑やかではない三丁目には、
いつもと変わらない景色があるだけ。
閑静な住宅街に入った頃には
二人とも歩き疲れたので、
公園で少し休む事にした。
初日はやっぱり収穫なしか……
そう思いながら
ぼんやりと辺りを見回す。
ふと見ると、
空き地の奥に古そうな扉が見えた。
「ねぇ、爽…」
返事がないので横を見ると、
爽はベンチを離れて、
花壇の近くで猫とじゃれていた。
あまりの緊張感のなさに、
歩み寄りながら思わず溜息を吐く。
「ねぇ、爽…あれ、何かな…?」
「おう、どうした?どれだ?」
私が指を指した先には、
殺風景な空き地があるだけだった。
「どれだよ。何もねぇじゃん。」
「ううん、何でもない…」
さっきは確かに
扉があったと思ったのだけど、
気のせいだろうか……
「よし、今日はここまで!
西高前から青バス乗ろう。」
爽に座って窓の外をぼんやり眺めた。
西高前から余山二小前まで、
バスで四十分程ある。
ぽつぽつと灯った
住宅地の灯りを通り過ぎて、
鮮やかなライトの群れに飛び込んだ。
四丁目寄りの大道路を通った時、
人気の少ない路地裏に
またあの扉を見た気がしたけど、
あまりに一瞬で確認出来なかった。
少し気になりはしたけど、
それが後にどれ程の影響を与えるか
考えもしなかった私は、
そのまま静かに瞼を閉じた。

