葬式も終わり、少しずつ家の片付けをしている。

ママの遺品は、葬儀屋さんに処分してもらったり、アタシが片身としてもってたり。

いらないものはとことん捨てた。

今日は、悠介と太陽と愛悠良と太陽の妹の天羽で買い物に行く。

愛悠良は、ともかく天羽はまだ4歳。

こりゃ大変だ…。

とりあえず、悠介の家に集合した。

「どこいくか?」
太陽が言った。

「家具買わなきゃ。ベッドと机。あと、タンスとか」

「だな。んじゃ家具屋にいくかー。」

こんな時仕切るのは、やっぱり悠介なんだよねー。

今まで布団で寝てたし、テーブルで勉強してたし、タンスはなくて一つの部屋にまとめてたから、何もなかった。

今思えば、何もかもこんな時のためだったのかも。

他にもスタンドライトとかソファーも買った。

「なんでそんなに買えるの?」
と愛悠良にきかれた。

「ママがね、お金を残してくれたんだよ。」

「なんで?」

「ん?うーちゃんの幸せのために。」

今まで、アホ面だった悠介も太陽も表情が変わった。

「何よ、その顔」

と笑って見せた。

すると、一気に空気が変わった。

「顔?ブスですが、何か?」

「うわ、いじけた。」

書類には、悠介に狭山家の住所を書いてもらった。

そのあと、ゲーセンでプリを撮った。

虹架にみせたら…なんていうかな?なんつって。

とあえず、ファミレスで食事をした。

ママ。しっかり自分の足でがんばってるよ…。

「おい!天羽ー。なにやってんだよー。」

天羽がジュースをこぼした。太陽が叫んだ。

「あーちゃん?こぼしたの?」

あたしは、天羽に話しかけた。

「うん。こもしちゃった」

天羽は、『こぼす』を『こもす』と言ってしまう。

「じゃ、こぼしたら、なんていうんだっけ?」

「ごめんなさい。」

「おう!天羽は、ごめんねが言えて偉いなぁ。」

悠介が応えた。

悠介は、小さい子の扱いが上手い!そこだけは、尊敬するなーなんてね。

「あーちゃん、ジュースおかわりしに行こうか」

といってドリンクを取りに行った。

ドリンクバーの位置から太陽と悠介をみて思った。

あいつら、すっごく成長した。すっごくたくましくなった。

「羽衣ちゃん!ジュース終わったよ」

いかんいかん。ぼーっとしてしまった。

戻ったら、天羽と愛悠良がたのんだアイスが来ていた。

あたしは、頼まなかった。あたしは、身軽なのが売りなんで…。重くなったら…ねー…

「今からなにする?」

太陽が言った。

「うちで遊ぶか?」

悠介が発したそのときだった。店内に誰か入ってきた。


****side:rintarou****

同クラのメンバーとなんとなくファミレスに入った。

禁煙席の窓際に悠介と太陽を見つけた。

「なにしてんだよ!1年!」

近づくと2人の真向かいに太陽の妹、悠介の妹、それから

羽衣がいた。

「倫先輩!こんにちわ!」

「びくったー。誰かと思いましたよー!」

悠介と太陽は、驚いていた。

「こんにちわ」

羽衣の笑顔は、いつも眩しい。そして雰囲気が幼い。

「先輩なにしてるんですか?」

「バカどもとつるんでる」

笑いながら話すと向こうも笑ってくれた。

「お前らこそなにやってんだよ。」

「引っ越しの準備っす」

太陽の応えを信じたくなかった。

「引っ越し?だれの?」

問いただすためにもう一度きいた。

「羽衣先輩のっすよ。俺んちに越してくるんですよ。」

なぜか焦りに似た感情が生まれた。

「親戚は?」

羽衣の目が曇った。

「いませんよ。」

さっきの澄んだ笑顔が消えていた。

曇った作り笑顔だった。

「みーんな、あたしが殺しちゃったんです。」

…え?…

「なんてね。死んじゃっただけですよ。」

あんな顔で言うから、まぢに受けてしまった。

ニコニコする羽衣と彼女の私服に見とれしまった。

「倫!いくぞー!」

「あー!わりわりー。んじゃ、またな?」

「さよならー。」

後髪を引かれる思いでその場を去った。

「倫。さっきの後輩?」

一番仲がいい隆が言った。

「ん?うん。まぁ。」
「へー。かわいいじゃん。」
「そーか?」
「うん。お前のタイプそー。」

ドキッとした。確かに最近、あいつに対する気持ちが変わっていた。初めて見たときから、幼い印象がかわいい。そう思っていた。でも、かわいいじゃない感情が入り混じってきた。

「あほか。」

隆をつねった。


****side:ui****

びっくりした…。

こんなとこで倫太郎先輩に会うだなんて…。

先輩、かっこよかったなー…。

…アタシ、変じゃなかったかな…。

「羽衣ってば!」

はっとした。

「あ、ごめんね!ぼーっとしてたや。」

「今からなにする?」

悠介が言った。

「悠介んち行きたいー!この前の漫画みせてよ」

太陽と悠介は、2人で漫画を集めているらしい。

太陽は、本当は違う中学だけど、小学生のときにハンドボールの強化選手に選ばれて、中学でもハンドを続けることになったらしい。

だから、部活がない日や緊急時は悠介のうちに帰っているし、休日の練習のあとも悠介の家にいる。

「あ、でも、今俺んちうるさいけど。それでもいい?」

悠介の家は、アタシが引っ越しするためのリフォームをしているらしい。

「いいよ。漫画読むだけだし。女組なにする?」

女組ぃー?

「あーちゃんねー、うーちゃんち行きたい!」

「おー!いいね!じゃあ、あゆはうーちゃんの引っ越しの準備手伝うよ。」

ということで、女組(?)はうちで遊ぶことになった。

タクシーでうちに帰った。

「みゃーん」

むーが寄ってきた。

「むーだ!!」

天羽は、とびついた。

「あーちゃん、むーにごはんあげて?」

「いいよ!」

天羽がむーと遊んでる間にアタシと愛悠良は、引越しの準備をした。

小さくなった服もとりあえず段ボールに詰めて狭山家にもっていって、愛悠良や天羽にあげようかな。

パジャマと制服、下着以外は段ボールに詰めてしまって重ねてまとめておいた。

「あゆ~。ありがとう。片付いたよ~。」

「よかった。今週には工事も終わるから次の日曜には、うちに来れるよ。」

「あゆたち、今どこにいるの?」

「大輝んち。でもさ、カズくん転勤になったから大輝たち引っ越すんだよ。」

カズくんとは、愛海さんの弟のことだ。

「転勤?どこに?」

「県内だって。5つくらいとなりの市らしいよ。」

大ちゃんたちは、隣の家に住んでたけどほとんど狭山家にいた。

「いつ引っ越すの?」

「7月いっぱいだった。金曜日に引っ越すらしいよ。」

入れ替わり。

見送りいこうかな・・・でも、やっぱり家族水入らずがいいよね。

なんて思ってたら愛海さんが来た。

「ごめんね?羽衣ちゃん。」

「いえ。愛悠良のおかげで片づけが済みました。」

「そう?役に立ったのね。じゃ、来週ね?」

「はい。さようなら。」

片付いた部屋にむーの声が響いた。