「お~い!ねこ~。おいで~。」
「違うよ。むーだよ。ねぇ?羽衣ちゃん。」
「うん。お風呂どうする?誰が入る?」
「あゆ、羽衣ちゃんとはいりたい!」
「いいよ。」
「おい、まじかよ。俺一人?」
「悠くん、一緒に入ったら、変態じゃん。」
「もとからでしょ?」
「違うから。一人で入れるし。」
「じゃあ、先に入るね~。」
そういって、愛悠良とお風呂に向かった。
「あ!まって。」
愛悠良は、ひきかえして、
「のぞかないでね~」
と、悠介に言った。
「バカ!のぞくかよ!」
悠介の返事が返ってくると、愛悠良は、満足そうに戻ってきた。
「わぁ!あわあわだ!」
湯船をみて、愛悠良が叫んだ。同時に、湯船に飛び込んだ。
・・・あがってこない。・・・まさか!
アタシは、急いで愛悠良を持ち上げた。
「あぁもう!潜ってたのにぃ!」」
潜ってたんかい・・・。紛らわしいなぁ。
「もう。溺れたのかと思ったじゃん。」
「あゆ、泳げるから溺れないよ。」
「おぉ。すごいなぁ。どのくらい?」
「クロールは、50mくらいで、平泳ぎと背泳ぎが、25mくらいかな・・・。」
「すごいねぇ!痩せてるのに・・・。」
むすっとして愛悠良が言った。
「羽衣ちゃんも痩せてるじゃん・・・。」
うぅ・・・。気にしてるのに・・・。
身長158cm、体重45kg。坂本羽衣です・・・。
お風呂をあがって、愛悠良はドライヤーをした。アタシは、アイロンをした。
「わぁ!まっすぐになった!!なにそれ!!」
「ヘアーアイロンだよ。」
「後で、あゆもやって!」
「えぇ~?もう、まっすぐじゃん。」
「いいの。」
リビングに行くと、悠介が勉強していた。
「あゆも勉強しようっと」
ママのお葬式は、どうするんだろう・・・。お金は、貯金から出せるけど・・・。
愛海さんにきいてみよう。
「羽衣。」
「何?」
「腹減った。なんか、食いたい。」
なにもないし・・・。
「何がいい?いまから作ろうか。」
「食えればいい。」
なにぃ~?
「愛悠良は?」
「アイスとパスタ。」
「はぁ?アイスは、ご飯じゃありませーん。」
「うーちゃんは、『何が食べたい?』ってききましたー。」
「そんな、キモい聞き方してませーん」
「もういいじゃん。アイスとパスタ?パスタはなにがいいの?ミートソース?」
「あゆ、ナポレオン!!」
はぁ?なぽれおん?
「ナポリタンだろー!!うけるわー!!ナポレオンは、外国人!!」
正直、アタシもうけた。
ナポレオン・・・。かわいそうに。
材料は、あった。
「すぐに作るよ。」
「はらぺこだよ・・・。」
「あゆも・・・。」
すぐにできた。余った材料と冷蔵庫のものでオムライスもつくった。
「どうぞ~!!おまたせ~。」
「やっとか・・・。」
「いただきま~す。」
二人は、すごい食欲。ぺろりとたいらげた。
「ふ~。」
「食った、食った。」
アタシは、参考書を開いて勉強を始めた。
「何?この学校は、宿題も課題もクソもないわけ?」
「ないよ。自学。」
「校則から何から何までゆるい学校だな。」
「まったくだよ。」
愛悠良は、寝ていた。悠介とアタシは、マンションの下のコンビニに行った。
悠介は、チョコでコーティングされたアイスを買った。アタシは、ティラミスを買った。
これからどうしよう・・・。そんな不安で頭がいっぱいだった。
「・・・そんな顔すんなよ。」
「だって・・・。ママ、死んだんだよ・・・?」
悠介も、浮かない顔をした。
「どう生きていくの?・・・もうなんでアタシだけを残してみんな死ぬの?アタシ、そんなに孤独が似合う?」
静かに首を横に振った。
「きっと、疫病神なんだろうな。アタシ・・・。きっと・・・これから出会うみんなを不幸にするんだよ。・・・一生、煙たがられて生きていくんだ。」
もう、すでに泣いていた。
「知ってるか?・・・悪ぃことのあとは、絶対にいいことあんだよ。」
「そんな保障ないじゃん・・・。」
めっちゃマイナス思考・・・。やなやつ・・・。
「保障するよ・・・。うちに来いよ。」
何言ってるのかわかんなかった。
「お前の家族が迎えに来るまでうちで待てばいいじゃん。」
「あんた、なにきいてんの?アタシ、家族いないの!」
「わかってる。・・・新しい家族。お前の好きな人と、その子供の。」
なぜか、切ない気持ちになった。そして泣いた。泣いて、泣いて、泣いた。
そのあいだ、悠介は抱きしめてくれてた。
その胸は、温かくて、優しくて、大きかった。