望美は、目が覚めた。

「ここは…?」

見覚えのある景色に望美は軽い混乱をきたす。

「先輩。起きてますか?」

「ゆずる…君。」

「朝食の用意ができましたよ。」

「ねぇ、ここは、どこ?」

「え?」

譲は、不思議そうな顔をして望美を見た。

「ごめん。へんなこと聞いてるよね。」

へへっと軽く笑いながら、起き上がる。

「…京の景時さんの家ですよ。」

「…そうだよね。」

そうだ。ここは、京…の春。

「平家は…?」

「…倒しましたよ。だから、ここへ戻ってきたんでしょう?」

「そう…だよね。」

「先輩、大丈夫ですか?」

「うん。ちょっと、変な夢を見て…。」

「夢…ですか?」

「内容は覚えてないんだけど…。」

望美は、夢を思い出そうとした。

だが、思い出そうにも、浮かぶ映像はすべて靄がかっていて何も思い出せない。

(誰かと…何か約束…した?…先生…と?)

そこで、はっと気づく。

「ねぇ!先生は何処?」

「…先輩…」

譲は、悲しそうな顔を望美に向けた。

「あっ。そうだ…よね。いないんだよね。」

(でも、目が覚めれば、会えるって…)

望美は目を伏せ、考え込む。

「それで、みんなで探してる。うん。そうだよ…ね。」

(彼の地…そう言っていた…夢?でも…)

「先輩、とりあえず、朝食にしましょう。後はそれからにして。」

「…うん。」

そう、返事をしつつも、望美は何故かその言葉が頭から離れなかった。


『彼の地で再び会おう。』


そして、望美は、ある場所を思い出す。

そのまま、京邸を飛び出していく。

再び、リズヴァーンに会うために。

再び、時空をめぐり合った二人の運命が、重なる。

今度は、間違えずに。

心を、失うことのないように。

永久に続く幸福のために。



→後書き