優しくリズヴァーンに包まれながら、望美はポツリと呟いた。

「目、…覚めちゃいました。」

いつも寝かされていたから、少しだけ得意そうに言いながら、望美は笑った。

「そうか。」

「…でももう少し、このままでいませんか?」

この時間がしあわせで楽しいから、もう少し、このままでいたい。

先生の傍で、先生に触れられる距離で、もう少しだけ…。

そう思っていると、ふわりとその体が浮いた。

「え?せんせっ?」

「お前の望むとおりに。」

気付けば、また布団に寝かされていた。

頭をリズヴァーンの腕に乗せ、寄り添うように。

そして、目をぱちくりしながら、ぱっと横を向けば、愉しそうな瞳で望美を見つめる、愛しい人。

「…もう、寝ませんよ?」

「あぁ。知っている。」

優しく笑うその顔を見て、望美にしあわせそうな笑みが浮かんだ。

「…先生は、何でも知っているんですね?」

望美はごろんと転がり、リズヴァーンのほうに体を向けた。

そして腕を伸ばし、リズヴァーンの肩にかかっていた金の髪に、優しく触れる。

「私のしたいことも、思っていることも。」

「…そう思うか?」

「ん~。そう思うと、ちょっと悔しいですから…。」

そう言って望美は、触れていた髪を摘み、髪先でリズヴァーンの頬を撫でた。

「いたずらしちゃいます。」

リズヴァーンがくすぐったそうに、笑いながら顔を少しだけ動かした。

「…やめなさい…。」

そう言いながらも、リズヴァーンが嫌がっているわけでないのを知っている望美は、片方の手をその胸板に置き、押さえつけるように体を押し当てる。

そして金色の髪を掴んだまま、その手を止めることなく、くすぐり続けた。

先生の頬を流れる金色の髪をその目で追いながら。

「『神子の思うままに』じゃないんですか?」

望美が楽しそうに、その昔言われたことを口にした。

もう、この庵に住み着いてどれくらいが経つのだろう。

この世界に来て、つらい日々、苦しい日々もあった。

だけど、その日がこのしあわせに続いていたと思うと、愛おしさが湧いてくる。

怒涛のように駆け抜けた日々が、今では心に暖かくしまわれている。

そして、愛しき人と積み重ねてきた時間も…。

至福の意味がわからなかった私はもういない。

望美は笑顔でリズヴァーンとの朝を楽しんでいる。

…この時が至福。

リズヴァーンが穏やかな笑みを浮かべ、開いているほうの手で、望美のいたずらな手首を優しく掴んだ。

「あっ。」

「お前は、もう、神子ではないだろう?」

真っ直ぐな瞳で見つめられ、望美は仄かに頬を染めた。

そして、その手首に、口付けを落とした。

ただ、手首に口付けをされただけなのに、すごくドキドキする。