言い訳のように呟く望美を、リズヴァーンが口元に笑みを浮かべたまま、見つめていた。

…こんな会話が、毎朝のように繰り返されている。

それはうれしいことなんだけど、何故か私は毎朝、再び寝かされてしまう。

頭を撫でられたり、優しく囁かれたり…。

…時には朝にはふさわしくない行為によって。

そして、必ずと言っていいほど、目覚めたときには朝ごはんは出来ていて…。

それが、二人の日常になりつつあった。

…私にはそれが不服だとしても、である。

「また、明日があるだろう?」

リズヴァーンの体の中に響く、少し篭った声を聞きながら、望美は微かにすねたような声を出す。

「…それ。昨日も言ってませんでしたか?」

「そうか?」

「…一昨日も、聞きました。」

望美は、ゆっくりと目を開く。

「今日こそは、私が作るんです。」

少しだけ覚めた頭で、朝食のメニューを考える。

「ご飯を炊いて、お味噌汁を作って、お魚焼いて…。」

小さく指を折りながら、そんな事を言っていると、ぐぅ~と鳴る望美のお腹。

「…腹が減って、眠れなかったのだな。」

押し殺したような笑いが上から降ってきて、望美は頬を赤らめた。

「違います…。」

小さく呟きながら、恥ずかしさをごまかすように望美はリズヴァーンに抱きつく。

「先生のせいです。」

「私の?」

「そうですよ。朝、ご飯作らせてくれないから、お腹が鳴るんです。」

いつもなら、目覚めればすぐにご飯があったから、それに体が慣れ始めたらしい。

恥ずかしくて、言えるはずもないが…。

「それは、悪いことをしていたな。」

ちっとも悪いとは思ってもいないような声色に、望美の頬が膨らむ。

「本当に、そう、思ってます?」

それをなだめるように、望美の背に手が回り、優しい香りに包まれる。

「私を疑うか?」

「…いいえ。」

そう言いながらも、リズヴァーンが『悪いとは思ってなどいない』ことを、望美は知っている。

そして、リズヴァーンも望美が『怒っているとは思っていない』ことも。

言葉遊びのような戯れが、二人の間で行われれば、どこか遠くで鳥が鳴き、朝だと教えてくれていた。