柔らかな光が、部屋を包む。

障子の向こうでは、鳥が鳴き、朝の訪れを教えていた。

望美がまぶたを開ければ、そこにはいつものように、大きな胸板がある。

丸まって眠る望美を包むように、腰には手が乗せられていた。

ゆっくりと顔を上げれば、間近にある青い瞳がいとおしげに細められる。

「おは…よう…ございます。」

掠れた声でのんびり言えば、ふわりと笑う愛しい人。

「目が覚めたか?」

「は…い。」

そう返事をしながら、もぞもぞと望美は褥から起き上がる。

単の裾が広がって、太ももまで足が見えているのも気にすることなく、その場にぺたんと座りこんだ。

未だ開けきらない目を擦りながら大きくあくびをしても、望美の眠気が覚めることはなかった。

「…ねむ…い…。」

ポツリと呟けば、リズヴァーンが笑みを湛えながら、ゆっくりと上半身を起き上がらせた。

二人の距離が離れることはない。

…そんな一日の始まり。




≪朝の小さな出来事≫




「ならば、まだ眠るか?」

リズヴァーンに優しい言葉で囁かれ、望美はつい、肯いてしまいそうになった。

…が、寸でのところで顔を横に向けた。

「ん~…。寝ちゃ、だめですよ…ね。」

舌足らずに呟きながら、コツンとリズヴァーンの胸に頭を置いた。

未だ開けきれないまぶたを、どうにか開こうとする。

「だが、眠いのだろう?」

リズヴァーンが笑いながら、その頭を抱えるように優しく撫で始める。

「…眠たいけど、今日は…お客さんが来るし…。」

客と言っても、九郎たち。

今日は、仲間が鞍馬を訪ねて来ることになっていた。

「それに、今日こそは、私が朝ごはん作りたいし…。」

そう言いつつも、望美のまぶたが下りてくる。