再び、源氏の武者が行く手を阻む。

「望美っ!先生!」

ただ、いつもと違うのは、それが、源氏の総大将たちということだけ。

事が、終わりに近づいている。

その予感に、望美は心を背けた。


まだ戦いが終わることを望まない二人に向かってくる、変わらない真っ直ぐな瞳を、望美は、まぶしく見つめた。

望美は知っていた。

この瞳にあるものを。

今は失われてしまった何かが、そこにはあった。


「望美っ!何故だ?何故こんなことを!!」

そう叫ぶ総大将は、傷ついているように見えた。
悲しそうに、でも、強い意志をその瞳に表していた。

その剣先はしっかりと望美に向けられている。

望美は苦笑いをしつつ、首を横に振る。

(何故?わからない…)

「望美さん、どうして京を荒らすのですか?」

そう聞く、軍師はひどく冷静で、己を押さえつけているようだった。
苦しそうに、吐くその言葉には優しさが見えている。

そして薙刀の刃先は、やはり望美に向けられている。

またもや、望美は首を横に振る。

(もう、わからないの…)

「先輩!何があったんですか!」

幼馴染が、苦しそうに呼ぶ。
傷ついているその心を、隠すことなく言葉に乗せる。

その手に握る弓の鏃はリズヴァーンを向いている。

望美は首を振るしかなかった。

(…ただ、一緒にいたかっただけ…)



そんな人たちに、望美は微笑んだ。

(しあわせでいたいの…先生と…。)

望美はゆっくり刀を振り上げ、しっかりと構えた。

光が差し込む中、かつての仲間に向けられる望美の剣には、あの美しい輝きがまったくなかった。

「ここから引きなさい。引かないなら斬る。」

あまりにも、静かな問いかけに、旧友も覚悟を決めたようだった。

その声を合図にリズヴァーンも太刀を構える。

戦いが始まった。

「はぁぁぁ!!!」

望美は総大将に斬りかかる。

リズヴァーンは弓矢を切り落とし、薙刀を己の太刀で受け止める。

きんっ!
きんっ!

何度も刀を交わす。

昔よりの、弟子に。

かつての、友に。

幼き頃よりの友に。

何より大切であったはずの仲間に。

きんっ!
きんっ!

望美は笑顔で、斬りかかる。

(何故だろう?もっと、悲しいものだと思っていたのに。)

「くっ!」
「はっ!」

手に馴染むその剣で、微笑みながら攻撃を受け止める。

(剣を交えることが、こんなにもうれしいなんて。)

戦いは続いていく。