すべてを賭しても、リズヴァーンを手に入れたかった。

そばにいて欲しかった。

だから、望美は京に全面戦争を仕掛けた。

リズヴァーンと共にあるために。

ただそのために、再び争いに身を投じた。




≪戦いの先にあるもの≫




行く手を、京を守る源氏軍の武者が、阻む。

望美は刀を振り上げ、しっかりと構えた。

「ここから引きなさい。引かないなら斬る。」

何の感情もないような静かな言葉が力を持って、その場に響く。

それと共に、戦いが始まる。

望美の傍らには、リズヴァーンの姿があった。


ひとつの戦いが終わると、必ず、リズヴァーンは外套で望美を包み、己の腕に抱く。

すべての世界から、望美を囲うようにその黒い外套を纏わせる。

そして、優しい声で訊ねるのだ。

「神子、大事無いか?」

望美は、その声を聞くと同時に全身の力を抜き、リズヴァーンに身を預け、背に腕をまわす。

「大丈夫です。」

微笑みながら見上げると、優しい笑顔が望美を迎える。

「そうか。」

リズヴァーンは望美をいとおしむように抱きしめる。

ただ、この瞬間だけが、二人の求める幸福だった。


毎日のように人を切り捨てる。

そんな日々が続いていく。

いつ終わるかわからない戦いが、望美のすべてになっていく。

終わらせたくないと願う望美の何かが、失われていく。

それを知りながらも、望美はリズヴァーンの腕に抱かれ、共にまた戦いへと進んでいく。

刹那の幸福を求めて。

愛する人のそばに居たいがために。

また、人を斬る。