そう言うと、望美はさほど大きくない荷物を持って、大きな岩陰まで駆けていく。

だが、着替えるといっても、ここは外。

何も囲いがあるわけでもない。

それに気付いたリズヴァーンが、すっと立ち上がり、望美の後を追おうとした。

「心配しなくても大丈夫だぜ。毎年のことだしな。」

将臣は苦笑しながらリズヴァーンを止めた。

「………。」

「どうせ望美も水着は着て来ているだろうし、ここには俺たちしかいねぇから、そんなに心配することもないさ。」

リズヴァーンはその言葉に、追うのをやめ、座りなおした。

そんなリズヴァーンに、将臣は笑いを隠せない。

「ほんと、望美は大事にされてんだな。」

「当然だ。」

惚気ともとれるその言葉に、笑いながらも将臣は、今日3人で来たことをほんの少し後悔した。

(でも、譲を連れてきたら、それはそれで、大変だったかもしれねぇな)

そう思いながら、将臣は、スポーツドリンクのキャップを取った。


着替え終わった望美は、恥ずかしそうにきょろきょろしつつ砂浜を歩く。

(変じゃないよね?)

今日のために、ダイエットをして少しだけ落とした体重。

水着も新しくこの前、買ったもの。

胸元を荷物で隠して、ドキドキしながら二人のもとへ戻った。

「おっ、やっと戻ってきたな。」

「おまたせ。」

冷静なフリをして将臣の横をすり抜け、そっと荷物を置いた。

ちらっと、リズヴァーンを見ると、一瞬、複雑そうな顔が見えた。

(えっ?なんか変?)

慌てて、自分の姿を見回す。

「何やってんだ?」

後ろから将臣から声をかけられ、望美は頭だけ振り返る。

「えっ!あっ、水着新しいのだから、変じゃないかと思って…。」

「いや、普通だろ?それより、コレ飲んどけよ?」

将臣が望美の肩越しに、ペットボトルを差し出す。

望美はそれを受け取って、リズヴァーンの隣に座った。