「…今からかけるのは…鬼の術だ。」

「鬼の?」

「そうだ。手を出しなさい。」

望美には、鬼の術がどんなものなのかは、よく分からない。

首を傾げながらも言われるがままに、右手を差し出す。

すると、手のひらに金色の【わっか】が置かれた。

(腕輪?…にしては小さい。)

「なんですか?これ。」

「それを指に…。」

(指?指輪なのかな?それにしては大きすぎるよね…。)

そのまま右手の中指にはめる。

「こうですか?」

「そうだ。そのまま、ここに。」

望美はリズヴァーン手のひらに、自分の手を重ねた。

「鬼の術って、何するんですか?」

「…怖いか?」
「全然。」

望美は即答する。

恐怖はない。

ただ、興味があるだけ。

くすりとリズヴァーンは笑った。

「すぐにわかる。」

そう言うと、リズヴァーンは望美の指先をそっと撫で上げる。

それは、一瞬の出来事だった。

リズヴァーンが手を離すと、望美の指には指輪がはまっていた。

「えっ―――!何で!?」

さっきまでとは違い、ずれることなく、ぴったりに。

望美は興奮のままに、言葉を漏らす。

「すっごーい!」

望美は右手を振ってみた。けれど、指輪は落ちる気配はすらない。

「どうやったんですか!?」

指輪を見たり、さわったりしても何の変化も起きない。

「お前の指に合うように術をかけた。」

「指輪にですか?」

「そうだ。」

「すご~い!手品みたい!」

嬉々とする望美をみて、リズヴァーンが笑みを深める。

「鬼の術でお前が喜ぶとは思いもしなかった。」

「だって、すごいですよ!これ!」

隠行はすごいとは思っても、楽しくはなかった。

でも、これは、面白い。

はずしてみたり、はめてみたり、色々な角度から眺めてみる。

「これってほかの指とかにもできるんですか?」

「できる。が、そのためには新しいものを用意せねばならん。」

「じゃぁ、この指輪の大きさは変えられないんですね?」

「そうだ。」

「残念。もう一回ぐらい見たかったのになぁ。」

大きさが変わるその瞬間が見たかった。

「では、そのうち、用意しよう。」

「ほんとですか?また見せてもらえるんですか?」

「お前が望むなら。」

「うれしいです!。」

手を空に掲げると、きらきら、光ってすごくきれいだった。