「本当だったら、今頃は朔の所で九郎さんと手合わせをしていたはずなんです!」

(忙しい九郎さんとやっと約束を取り付けたのに!!)

「なのに、朝から先生が、あんなこと…するから…。」

言いながら、今朝のことを思い出して、恥ずかしくて声が小さくなる。

(でも、ここで、引き下がるわけにはいかない!)

恥ずかしい思いを振り切って、リズヴァーンを睨み付ける。

「なのに!先生は自分ばっかり稽古してるなんてずるいです!!」

「………。」

真っ赤な顔で、目を潤ませながら、上目遣いで睨み付けられ、リズヴァーンは苦笑した。

ゆっくりと、優しく、望美の背中に両手を回し、その腕に抱く。

「先生!聞いてるんですか!?」

腕の中でもぞもぞと、抗議の声をあげる望美をリズヴァーンはいとおしく見つめる。

「それで、嫌がらせか?」

「そうです!先生の邪魔をするんです!」

望美は、リズヴァーンの腕の中で、『ふふん』と、少し勝ち誇った顔をした。

「どうです?稽古できないでしょ?」

「そうだな。」

「やったぁ!」

降参ともとれるその言葉に、望美は素直に喜んだ。

(先生に勝った!)

だが、リズヴァーンの次の一言が、その喜びに水を差した。

「だが、お前は、剣を振るうことを止めて、それでよしとするのか?」