奈津は驚いたと言うように、目を見開いた。

すぐに、
「かわいそうな、律人」

奈津は呟くように言って、俺にすり寄った。

かわいそう、か。

医師であった親父は俺と母親から離れた後、故郷である沖縄で診療所を開いたそうだ。

俺も、中学3年生までは親父と手紙のやりとりをしていた。

手紙も俺が高校に入ったとたん、途絶えてしまった。

親父も新しい女を作ったのだろう。

母親が男を作って俺を置いて出て行ったように。

家に入ると、灯りをつける。