奈津は、学校の保健室の先生じゃない。

有名議員を夫に持つ妻じゃない。

俺の、たった1人の彼女なんだ。

「奈津」

俺は奈津の名前を呼んだ。

奈津が俺に視線を向ける。

俺はゆっくりと、奈津の方に向かって自分の顔を近づけた。

その距離は、後少し。

俺はそっと、目を閉じる。

俺たちの距離がゼロになったその瞬間、唇が重なった。


夜の電車は、誰もいない。

ガタンガタンと、2人で電車に揺られる。