「律人がいるだけでもう充分なんだもん」

奈津が言った。

「おいおい、かわいいこと言っちゃってー」

照れ隠しに言った俺に、
「だってホントなんだもん」

奈津が言った。

周りは、俺たちが不倫をしているなんて誰も思っていないだろう。

ただの恋人同士として、俺たちを見ていることだろう。

「奈津」

俺はかぶっていたハットを外すと、それでお互いの顔を隠した。

チュッ

「ちょっ…!」

奈津の顔は一気にゆでダコになった。

「大丈夫、一瞬だけだったから」

俺は笑いながらハットをかぶった。