中田さんがハンカチを差し出した。

気づいて顔に手を当てると、俺は泣いていた。

「藤森さん、頑張りましょう」

中田さんが言った。

「私たち秘書は、できる限りのことをつくしました。

今度は、藤森さんの番です。

あなたが奥様との幸せまでの道のりをつくしてください」

本当だったら、中田さんも反対する側。

なのに、中田さんもカネさんのように俺たちを応援している。

人って、こんなにも温かかったんだ。

もしかしたら、これも奈津が教えてくれたのかも知れない。

「はい」

泣きながら、俺は首を縦に振ってうなずいた。