* * *

その日の夜。

「で、どうなってる?」

西川はソファーに腰を下ろすと、それまで奈津の見張りをさせていた秘書に尋ねた。

「相変わらず、です」

秘書がうつむいて、西川の質問に答えた。

チッと、西川は舌打ちした。

あいつ、まだあの男の名前を呼びやがっているのか。

心の中で毒づいた西川に、
「お願いです!」

突然秘書が叫んだと思ったら、土下座をしていた。

「奥様を解放してください!」

床が額についている。