雨は嫌いだ。

心の奥底に封印していた古傷がうずくから。

「――父さん…」

俺は呟くと、ベッドの下に置いてあるクッキーの缶を引っ張り出した。

ふたを開けると、たくさんの紙。

全部、沖縄にいる父親からの手紙だ。

元気だったかとか、学校は楽しいかとか、そんな他愛もない内容ばかりが書いてある。

でも父親との手紙のやりとりは楽しかった。

手紙を書いている間は、母親と一緒だと言う苦しい空間から解放される。

現実から逃げられると言う解放感。

だから、父親との手紙のやりとりは好きだった。