「奈津、ごめん…」

校長室を出るなり、律人が謝った。

「どうして、律人が謝るの?」

悪いのは、私なのに…。

「奈津が既婚者だって言うことを知っているのに…。

なのに俺は、奈津を好きになってつきあったから…。

だから…」

違うよ、律人。

「律人は、悪くなんかない…」

そうよ。

「――私が悪いんだから…」

結婚しているのに、律人を好きになった私が悪いんだから…。