扉の中は、みるも無惨な状態だった。


壁や床にできた大量のシミ。


バラバラに飛び散った、手足や肉片。


「ひどい…」


「気持ち悪い。」


由衣がその場にうずくまる。


「姉さん。」


「大丈夫。」


「啓太!!」


美幸は、ガラスでできた、扉の中に、人の姿を見つけた。


中は、ガラスの敷居で区切られていて、男と女に別れて、入れられている。


美幸は必死に、夫を捜す。


百合も翔太を捜す。



翔太は部屋の隅にうずくまっていた。


「翔太!!」


百合は、隣をみる。


祥子と目があった気がした。


「お母さん!!」


祥子は、人をかき分けて、こちらへ来る。

何かを必死に訴えているが、声は聞こえない。


百合は、すすまみれで汚れた壁に、“必ず助ける”と書いて、そこを離れた。


「何あれ!!」


後輩の1人が、叫び声をあげる。


木製の棚に置かれていたのは、手足のない人間。


「達磨だ。」


百合が呟く。


生きているのだろうか。


それは、焦点の定まらない目で、こちらをみていた。


「聞いたことある。本当にする奴がいるなんてな。」


扉が静かに開く。


黒いコートの女が立っていた。


「呪悪様のお出ましだ。」


全員が指をぽきぽきとならす。