その頃、百合たちはほかの部屋と比べて、やけに扉の大きい部屋の前にいた。


「ここかな。」


「多分。」


「臭い。」


そこだけは、悪臭が立ちこめていた。


血なまぐさいような、肉の腐ったような臭い。


「たぶんここにみんながいる。」


「覚悟は良いか?最後の戦いが始まるぞ」

リーダーの、涼子が振り返ると、メンバーの1人が泣いていた。


「美幸?どうした?」


「だってこの臭い…嫌でも考えちゃう。もしかしたら…って。」


百合は、その言葉に納得した。


これは、明らかに腐敗臭。


つまり、誰かが殺されたまま放置されている証拠。


百合も、最悪の展開が頭から離れなかった。


ずっと考えずにいた。


考えたくなかった。


もう二人は、この世にいないかもしれない。


もしかしたら、この臭いは…。


「考えちゃだめだ。泣くのは、中をみてからだ。」


「うん…ごめん。」


扉に手をかけようとしたそのとき、


「姉さん!!」


振り返ると、かつての後輩たちが、集まってきていた。


「お前たち、どうしてここに?」


「昨日、由衣姉さんのブログみたんです。そこにある写メから、たぶんここだろうって。」


「何で声かけてくれなかったんすか?できる限り、仲間にも声かけました。もうじき来るはずです。」


「ありがとう…けど、帰れ。」


「なんで!?」


「あんたたちは、まだまだ人生楽しまなきゃ。死ぬかもしれないんだぞ。」


「だからじゃないですか!!昔、私がやんちゃしてたとき、私が落とし前つけさせられそうになったら、姉さんたちは庇ってくれた。どんなにボコボコにされたって、いつも笑って許してくれた。恩返しくらい、させてください。」


その言葉に全員黙った。


百合、美幸、そしてリーダーの涼子は高校時代、レディースチームを作っていた。


彼女たちは、その当時の後輩だ。


「いいじゃん。人数が多い方が、助かる」

そうフォローしたのは、百合だった。


バタバタと足音が聞こえてくる。


いつの間にか、特効服に身を包んだ後輩たちが、立っていた。