1人、また1人と人が消えていく。


翔太の順番が廻ってくる日も近い。


翔太は、日に日に心を病んだ。


あの男はもう、あの日のように、翔太に語りかけてはくれない。


譫言のように、恋人の名を呼んでいる。


まるでそこに、彼女がいるかのように。


彼が大事に抱えている物は、腐敗が進んでいた。


悪臭が室内にこもる。


「臭い。」


みんな彼と距離をあける。


どんなに逃げ回っても、その臭いからは、逃れられない。


翔太はどこかにいる百合を思った。


『二人がいなくなっても私捜さないから』

いつかの百合の言葉を思い出す。


百合はとっくに自分のことなど忘れて、幸せに暮らしているだろうか。


そうであって欲しいと思う反面、助けにきて欲しいとも、願っている。


「百合ィ〜…会いたいよぉ〜」


「助けにきたよ。」


「百合?どうしてここに?どうやって中に入ったの?」


どこからかドアをたたく音が聞こえた。


翔太は、その音で我に返る。


堅い何かで殴っているかのような音。


それは、今まで聞いたこともないような音だった。


「誰?やめてよぉ〜。百合〜助けてよ〜」

気がつくと、そこにいたはずの百合は消えていた。