紅茶の湯気から、甘い香りが立ち上る。


「百合ィ〜僕も紅茶ァ〜」


「はいどうぞ。」


百合はマグカップを、翔太に差し出す。


テレビは、同じニュースばかりやっている。


「忽然と姿を消した…さんと…は未だに行方不明で…。」


「最近多いよね。」


そういいながら百合は、不安を抱いていた。


消えているのは、母子ばかり。


ふと、あの都市伝説が頭をよぎる。


何度偶然だと言い聞かせても、それを証明する者はない。


「百合さん?」


「へっ?呼んだ?」


「さっきからずっと呼んでるよぉ〜。最近おかしいよ?」


「普通だよ。」


「まぁ百合は前からボーッとして結構どじ踏んでるもんねぇ〜。」


「うるさいなぁ。」


このまま何事もなければいいと、百合は想った。


気のせいであってほしいと心から願った。