あの日は、雨が降っていた。
* * * * *
朝起きて、昼前には必ず来るはずの、親父からの連絡がない。
おかしい。
もしかして“忘れ物”をし忘れたのだろうか、なんてひとりで笑った。
俺はこの日。
初めて、詩乃に会うためだけに病院へ向かった。
雨脚は強く、中庭で待つわけにもいかず、数回連れていかれたことのある、詩乃ひとり用の病室まで行った。
ガラガラと開けた部屋の様子に、俺の目の前は真っ暗になった。
それは、空っぽだった。
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