つんでのところで、曖昧に行き場を失った手を、詩乃にではなく、その花へと伸ばした。 焦った。 花を見つめる詩乃の横顔が、まるで今すぐ消えてしまいそうなほどに儚げで。 思わず、抱きしめてしまいたくなった。 この花は、さっきの詩乃に似ているなと思った。 「…そ、だな。 一番好きな理由は?」 ふふふ、といつものように笑う詩乃には、やはりさっきまでの面影はない。