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「あき。腹減ったパン買ってきてくれや」
「分かったわよ……!!」

悪夢のような学校生活1日目
こんなにも学校が憂鬱だと感じたことはないが、
思ったより木瀬の要求は軽かった。

「亮ーなんであの女パシリに使ってるの?」
「んー……まぁ昨日いろいろあってん」
「何それぇ?! 付き合ってないよねー?」
「俺が女と付き合うと思うか?」
「だよね~冗談きついよね~♪」

聞こえるように話しているのだろう。
相変わらず奇声をあげる猿のような声が聞こえる。

「……買ってきたけど」
「クリームパンてお前、俺が甘いモン食えへんの知らへんのか? 買いなおして来い」
「はあ?! ちょっとアンタ人が必死で……!」
「……いいんか?俺にそんな態度取って」

木瀬がニヤリと笑みを浮かべる。
拒否権が無いのは、十分承知していた。

「……ッ……分かったわよ!!!」

クリームパンを半ば強引に奪い取り、再び購買へと向かう。
後ろからまたクスクスと笑う声と妬むような棘が突き刺さり、先ほどよりも苛立ちが増していった。

「あき~~大丈夫?私も一緒に行くよ!!」

そんな時だった。
教室の中から状況を見ていたのか、ゆらが眉を少し下げながらここちらへ寄ってきた。

「ゆら……!! ありがとう」
「あき~どうしたの?木瀬のパシリなんて……昨日何かあったの!?」
「い、いやなんでもないの!! ちょっとアイツと『賭け』しちゃってね。
それで負けちゃったからパシリなの……!!」
「そっかぁ、大変だね……でも私はいつだってあきの見方だから!」
「ゆら……大好きー!」
「私もあき大好きー!!」

少し離れた所から、木瀬の突き刺さるような視線を感じていたけれど
あえてそれは感じなかったことにしていた。
反応してしまったら、もっと状況は悪くなる一方だと悟ったからだ。

「女の友情なんてくだらんもんやろ……そや、エェこと思いついた」