「あと、数か月といったところでしょうな…」

「え?」


目の前が、真っ暗になった。
告げる医者は信じられないというように目をこすり、結果の書いてある紙に幾度も視線を移すけれど、「信じられない」と言いたいのは私のほうだった。


「ま、待ってください、お医者様。私の体は、まだ数年は持つと…去年おっしゃられたではありませんか?」


恐怖に喚きだしたい気分を必死に抑えて、慎重に言葉を選ぶ。
震えそうになる手を胸でがっしりと組み合わせ、私はまっすぐにお医者様を見つめる。

「それはそうなのです。そうなのですが…カレン様。私にも状況がさっぱりわからないのでございます」

お医者様は懐からハンカチを出して、脂汗をふき取り、本当に困った顔をした。


「去年も、今回も、診断結果には間違いはございません。カレン様のお体は、急速に悪化の一途をたどっております」


奈落の底に──落とされた。