「ねぇ……お母さんは病気を治すことも産婆だって薬草だって扱えるのに、どうして皆を治してあげないの?」

無邪気な質問のつもりだった。
他意はなかった。
ただただ、不思議だったのだ。


それなのに、跳ねるように動いた母の肩は止まった。

セルマを見る顔は青ざめて、目があちらこちらにさまよっている。


どうしてそんな……


セルマの体にじとりと気持ち悪い感覚が這いずる。

「やっぱりいいよ、お母さん」

妙な空間から逃げ出そうとしたのを止めたのは、母だった。

「いえ、お聞きなさい。当然の疑問だもの」