その場から、足早に立ち去ると、噴水の前でユノがポツリと聞いた。
「あの程度、私一人でもどうにかなったのだが」
どこか不満げに吐き出されたそれに、エルヴィスは苦笑した。
「わかっちゃいないな。ああいうのは力でねじ伏せたほうが厄介なもんな」
「…複雑なのだな」
人の世界というものは。
エルヴィスはクスと笑う。
いいよ、お前はそれで。これからゆっくりしていけば。
「その方が、人に染まるより美しくなるさ。きっとな」
「何のことだ?」
「別に~」
アイツにたいして怒った理由。
むかついたからだけじゃない。
ユノの気高い美しさを知らずに侮辱したこと。
そして──何一つ知らないユノに対して、真っ先に人の醜さを見せ付けたことだ。
俺の元にやってきてくれた純白を、そう簡単に染めてなるものか。
「さて、楽しい舞踏会に戻るかな~」
「わかった気がする。主は女性を吟味しているその場が愉快なのだな」
う、と顔をゆがめユノを振り返る。
「そういう難しい言い方すんなよ。ただ楽しいからに決まってるな」
「そうか。…あと、」
「まだあんのかよ!」
ユノは少し真剣な瞳でエルヴィスの前に立つ。
「我々はあまり銃を好かない。鉄の塊と音が狂わすのだ」
「って言われてもなぁ…」
エルヴィスは掌より少し大きいくらいの手の中身を見つめた。



