英国喜劇リコレクション


それをそのまま引き寄せ、彼女の首元に顔をうずめる。

「──っ、エル、ヴィス様ぁっ!」

「今から俺はちょっと出てくる。その間、俺がいないことはうまく誤魔化せ。……出来るよな?」

ささやいて顔を上げれば、女の顔は真っ赤に火照り、恥ずかしさに震えながら小さくうなずいた。

「いい子な」

最後にウインクをプレゼントすると、はうっと受けて女は後ずさった。

これでよし。
さっさと踵を返したエルヴィスの表情は真剣そのもの。
夜会のときの仮面ではない。

きらびやかな合間をすり抜け、外に出る。
夜気がひんやりと頭を冷やす。

「確か、あっちだったな」

脇目も振らず、エルヴィスは庭の奥へと足を進めた。

「──^─、─」

「!」

誰かいる。垣根の向こう、屋敷からは死角だ。
音を立てないようにしながら、エルヴィスは懐をまさぐった。
そして取り出されたのは──小さな拳銃、護身用の短銃だ。
そのまま、声の聞こえる方へ移動する。

「だから答えろと言っているんだ!」

何な、妙に荒々しいな。

少しずつ姿が見える位置に移動しつつ、耳をそばだてた。

「答えるも何も、本当のことを言っている」

ユ ノ ! ?
休憩のための東屋の柱に隠れて顔を確認。
確かに、ユノだ。

「お前は何者だっ! 突然出てきて王子の従者を掻っ攫っていきやがって!」

「知ったことか。私が認められた。それだけであろう」

…なんだよ、そんなことな。くだらねぇ
王子の従者の地位は貴族にとって箔がつくようなもの。
それを狙っていたらどこの馬(いや、ユニコーンか)の骨とも知れない男がその地位を奪ってしまったのだ。
それも一切の予告もなしに、突然。