「そそそんな、冷たい目しなさんな」
「呂律が微妙に回っていないが?」
大真面目な顔で返されると若干困る。
だめだ、まだこいつに冗談は通じにくいらしい。
ちぇ、面倒だな。
影で口を尖らせる主人を困惑で寄った眉で一瞥しつつ、ユノは部屋を出て行く。
置いていかれた! ショックを受けその背中をとぼとぼとついていくと、前を向いたままにユノが口を開いた。
「何故そんなに異性を求めるのだ?」
エルヴィスは眉を吊り上げた。
「異性って言い方どうな? お嬢さんかレディだろ」
「変わりはないだろう」
「大違いだっ! 誠意が違うな! お前そんなんじゃ嫌われるぜ?」
全く、何一つわかっちゃいない!
鼻息荒くしかっても、ユノは理解できないとしか呟かない。
「あのなぁ──」
「メスなど、交配を重ねて子供作ればそれでいいではないか?」
「──っ!」
「……主よ?」
突然足を止めた主人を待たねば、と思い出して怪訝に振り返ると────エルヴィスの顔色が大きく変わっていた。
「主よ、具合でも悪いのか?」
「おおお、おま、おまえっ!」
また呂律が回っていない。一体主に何が、と思って顔に手を伸ばすと、震える手ではたかれた。
「こ、コーハイって!」
何だ、そんなことか。
しかし主の顔は真っ赤だ。
「何か問題でも?」
「ユノの、バッカ野郎ぉぉぉおおぉう!」
走り去ってしまった。
「だから、何故なのだ?」
このころのエルヴィスは、まだちょっとウブだった。
ため息をついて、足を進めようとしたユノが一瞬止まった。
しかし、わずかに眉を動かしてまた前を向いた。



