英国喜劇リコレクション


「ごめんごめんて! ごめんなさい! もうしません!」

「本当な?」

ブンブンと首を縦に振って、ようやく手が離される。

ダッと曲がり角まで走って一度だけ振り返ると、

「エル兄のバカ!! 大嫌いだ! 覚えてろよ」

と、覚えたての悪口を並びたてて角に消えた。

が、すぐに

「ウギャァーー!!」

悲鳴が響いて、ほぼ入れ違いにユノが歩いて来た。

「ディゼルに会った?」

「ええ。何故だかひどく怯えていらしたようだが……」

困ったと眉を下げるユノの袖をエルヴィスは引っ張る。

「いいないいな、放っておけ。面白いから。あ、絶対に謝るなよ?」

端正な顔立ちのユノであるが、いかんせん表情が乏しく、誤解を受けやすい。
振り向けば突然ユノがいて、その細い目で見下ろされたら――

ユノ本人に悪気は一切ないのだが、ひどい兄である。

主の命令となれば従わない訳にはいかない。
が、ユノは整った顔を傾け、

「主は何故そんなに楽しそうなのだ?」


この日を境に、ディゼルはユノを怖がるようになったのだが、謝る機会は与えられていないようだ。

ディゼルのトラウマはまだ続く。