森を抜け、家を過ぎ、それでも止まらない。 錯乱した足はどこかへ方向を変え、涙に濡れた瞳は行方を知る由もない。 疲れて足を止めた頃には、来たこともないほどの奥地へとたどり着いていた。 大人数人で囲って一周出来るくらいの太さの幹を持つ大樹が何本も鎮座し、透き通った湧き水の泉がひんやりとした空気を醸し出している。 “――何奴” 「誰……?」 頭に直接響く声。 訳もわからず、泉の畔で辺りを見渡す。 が、何もいない。