父はモノを売る以外には木こりをしている。 根っからの森育ちのせいか、恐ろしく寡黙だ。 この時もそうだった。 名前を呼んだ以外に父は何も語らず、ただ横に座って、瞬き始めた星を見遣った。 この沈黙が、不思議と心地よい。 しばらく繰り返した嗚咽が治まると、父はセルマの頭を撫でた。 「もう大丈夫。……ありがとう」 「わかった、か? それならよろしい」 父は私がわかっていることを改めて口に出したりしない。 わかったと思ったら、あとは自分に任せてくれるのだ。