私は…こんな時でも、ディゼル様を…
そんなことを思ったときには、どこかもわからぬ、大きな時計の前にいた。
最後に流した涙は、手のひらにはない。
ふと気づくと、金髪の少年がそこにいた。
彼は何を言うでもなく、私をただただ見つめる。
どこか、悲しそうに、寂しそうに。
やがて私のほうから彼に歩み寄ってみる。
それでも彼は言葉を発することはなく。
私から視線を逸らして俯いた。
「ただわかるのは、私にはもう。戻る道がないということ。それだけなのですね…」
「……」
「…後悔は、大いにあります。でも…それはそういうもの、として受け入れることしか私に…いえ私たちには、できないのですね」
「…ボクは、違うよ。ボクは君たちとは…」
私に言っているようには聞こえなかった。
自らに言い聞かせているのだろうか。
それなら、私も好きなことをいうことにしましょう。
「たった…一言、伝えられなかったことだけが心残りです…私に、伝える術はもうありません
ならば、理に従いましょう」
私は、その少年に背を向け、止まって壊れた時計を背後に、闇に足を進めていった。
不思議と、その時だけは涙が出ない。
私が伝えたい言葉は、もしかしたら、すでに世界を違うディゼル様にとっては、呪いの言葉にしかならないのかも、しれない
それならば、伝えられなくとも、いいのかもしれない。



